体幹(脊柱・その他の体幹骨)の後遺障害

「脊柱」とは背骨のことです。
「その他の体幹骨」とはあまり馴染みのない言葉ですが、鎖骨、胸骨、肋骨、骨盤骨等がこれにあたります。

交通事故によって生じる体幹骨の傷害としては、骨の圧迫骨折や関節の脱臼などがあり、これらの怪我を原因とした疼痛(痛み)や骨の変形や運動障害が主な後遺障害の症状です。

自賠法施行令に定められた後遺障害等級認定基準上では、体幹の後遺障害として、「脊柱の後遺障害」と「その他の体幹骨の後遺障害」の2つの基準があり、その中で脊柱の後遺障害は、「変形障害」と「運動障害」の2つに分かれ、その他の体幹骨の後遺障害には、「変形障害」があります。
交通事故における脊柱の障害として最も多いのは、頸椎や腰椎の捻挫(いわゆるむち打ち)です。その他には胸椎や腰椎の圧迫骨折、脱臼等があげられます。
また、脊椎の圧迫骨折等により、脊髄が損傷される場合があり、これを脊髄損傷といいます。
脊髄損傷は重篤な後遺障害が生じる傷害です。詳しい各障害については次のページを参照ください。

脊柱の後遺障害

脊柱は、頭蓋から骨盤までを通っている、いわゆる背骨のことです。
脊柱は「脊椎」という5つの部位に分類され、脊椎の中には脊髄という重要な神経が通っています。
この脊椎は、部位ごとに名前がついていて、上から順に頸椎、胸椎、腰椎、仙骨、尾骨といいます。
脊柱は、弓なりに曲がっていて、これを「彎曲」といいます。前へ曲がっている状態を「前彎」、後ろへ反っている状態を「後彎」といいます。
脊柱には3箇所の彎曲があり、頸椎部は前彎、胸椎部は後彎、腰椎部は前彎を呈しています。これは人間が2足歩行へと進化する過程で生じたもので、脊柱が真っすぐな構造をしている場合と比べて、対外からの圧力に対する抵抗性が10倍違うといわれています。

脊椎は、それぞれ椎骨と呼ばれる骨とその間にある椎間板というクッションの役割を果たす線維軟骨の連続で構成されています。
この脊椎を構成する椎骨には、上から順に番号付けされていて、たとえば頸椎の3番目の骨であれば、「C3」といった表記が用いられます。

脊椎の名称

頸椎(Cervical spine/C1~C7)
頸椎は頭蓋へと続く脊椎で、7つの椎骨で構成されていて、脊椎の中でもっとも可動性が高いです。頸椎の7つの椎骨のうち、上から3番目から7番目までは似た形をしていますが、1番目と2番目は他の5つと比べるとやや特徴的な形をしています。
そして1番目「環椎」と2番目「軸椎」の間の関節を「環軸関節」といいます。この環軸関節は、主要運動として屈曲・伸展と回旋を、また、参考運動として側屈と多彩な動きをします。
胸椎(Thoracic/T1~12)
頸椎と腰椎の間の脊椎です。12個の椎骨で構成されています。胸椎の特徴は、肋骨とつながるための関節面がついている点です。
腰椎(Lumbar/L1~L5)
胸椎と仙骨の間の脊椎です。5個の椎骨で構成されています。
仙骨(Sacrum/S1~S5)
仙骨は、骨盤を形成している骨(寛骨、仙骨、尾骨)のうちのひとつです。幼少期は第1から第5まで分かれていますが、成人すると癒合してひとつの骨となります。このため、仙椎ではなく仙骨と表記されます。
尾骨(Coccyx)
脊柱の一番下の部分です。仙骨同様、骨盤を形成する骨のうちのひとつです。胎児期には9個の尾椎が存在しますが、成長と共に下から退化し、最終的には個人差があるものの、3~5個の尾椎が残ります。この尾椎も成人すると癒合してひとつの骨となります。

脊柱の後遺障害認定の原則

脊柱のうち、頸椎は頭部の支持機能(頭部を支える機能)、胸椎と腰椎は体幹の支持機能(体幹を支える機能)をそれぞれ果たしています。このため、後遺障害等級認定上では、「頸椎」と「胸椎・腰椎」はそれぞれ別の部位として扱い、それぞれの部位ごとに等級を認定し、「併合」という後遺障害等級をひとつにまとめる処理を行います。
また、仙骨と尾骨は、医学的には脊柱を構成する骨の一部ですが、交通事故における後遺障害等級認定の中では脊柱には含まれていません。 後遺障害等級認定上の脊柱の障害とは、頸部や体幹を支える機能(支持機能)や支えた状態を保持する機能(保持機能)及びその運動機能に着目していることから、これらの機能を果たさない仙骨及び尾骨は脊柱には含まれないと考えられています。もっとも、仙骨は、その他の体幹骨の「骨盤骨」には含まれます。

1.脊柱の変形障害

脊柱の変形障害の後遺障害認定基準

等級後遺障害
第6級5号脊柱に著しい変形を残すもの
第8級相当脊柱に中程度の変形を残すもの
第11級7号脊柱に変形を残すもの

脊柱の変形障害の後遺障害判断基準

脊柱の変形障害は、コブ法という測定方法を用いて、それぞれ程度に応じて認定します。
なお、椎骨には、横突起や棘突起がありますが、これらの局部的な変形及び欠損は評価の対象にはなりません。

コブ法とは、脊柱の側彎の測定方法です。
X線写真で脊柱を撮影し、上と下でそれぞれ一番傾いている椎骨の外縁から直線を引き、この2つの線が交わる部分の角度を測定します。
この2つの線が形成する角度のことを「コブ角」といいます。

<脊柱に著しい変形を残すもの>
X線写真、CT画像又はMRI画像により、脊椎の圧迫骨折等を確認することができ、次のいずれかに該当するものをいいます。
Ⅰ 脊椎圧迫骨折等により、2個以上椎体の前方椎体高が著しく減少し、
後彎が生じているもの。
Ⅱ 脊椎圧迫骨折等により、1個以上の椎体の前方椎体高が減少し、
コブ法による側彎度が50度以上のもの。
<脊柱に中程度の変形を残すもの>
X線写真、CT画像又はMRI画像により、脊椎の圧迫骨折等を確認することができ、次のいずれかに該当するものをいいます。
Ⅰ 上記Ⅱに該当する後彎が生じているもの。
Ⅱ コブ法による側彎度が50度以上であるもの。
Ⅲ 環椎又は軸椎の変形・固定(環椎と軸椎との固定術が行われた場合を含む。)により、次のいずれかに該当するもの。
回旋位又は屈曲・伸展位の確度は、軸椎以下の脊柱を可動させずに測定します。
・60度以上の回旋位になっているもの。
・50度以上の屈曲又は60度以上の伸展位となっているもの。
・側屈位となっていて、X線写真、CT又はMRI画像により、矯正位の頭蓋底部の両端を結んだ線と、軸椎下面との平行線が交わる確度が30度以上の斜位となっていることが確認できるもの。
<脊柱に変形を残すもの>
次のいずれかに該当するものをいいます。
Ⅰ 脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがX線写真等により確認できるもの。
Ⅱ 脊椎固定術が行われたもの(移植した骨がいずれかの脊椎に吸収されたものを除く)。
Ⅲ 3個以上の脊椎について、椎弓切除手術等の椎弓形成術を受けたもの。

2.脊柱の運動障害

脊柱の運動障害の後遺障害認定基準

等級後遺障害
第6級5号脊柱に著しい運動障害を残すもの
第8級2号脊柱に運動障害を残すもの

脊柱の運動障害の後遺障害判断基準

<脊柱に著しい運動障害を残すもの>
次のいずれかにより、頸部及び胸腰部が全く可動しない、又は10%以下しか動かないもの。
・頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等があり、そのことがX線写真、CT画像又はMRI画像により確認できるもの。
・頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの。
・項背腰部軟部組織の明らかな器質的変化が認められるもの。
<脊柱に運動障害を残すもの>
Ⅰ 次のいずれかにより、頸部及び胸腰部の可動域が1/2以下に制限されたもの。
・頸椎及び胸腰椎に脊椎圧迫骨折等があり、そのことがX線写真、CT画像、MRI画像で確認できるもの。
・頸椎または胸腰椎に脊椎固定術が行われたもの。
・項背腰軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの。
Ⅱ 頭蓋、上位頸椎間に著しい異常可動性が生じたもの。

このほか、以下のような場合は、「局部の神経症状」として第14級9号が認定されます。
・X線写真、CT画像又はMRI画像により確認ができない。
・項背腰部軟部組織の器質的変化が認められない。
・単に疼痛のために運動障害を残すもの。

その他の体幹骨の後遺障害

その他の体幹骨とは、鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨、骨盤骨(仙骨を含む)を指します。

その他の体幹骨の後遺障害認定基準

等級後遺障害
第12級5号鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの

その他の体幹骨の後遺障害判断基準

<著しい変形を残すもの>
裸体になったときに変形や欠損が明らかにわかる程度のものを指します。X線写真でみてはじめて発見できる程度のものは該当しません。
なお、肋骨の変形障害が生じた場合は、肋骨の本数、程度、部位等に関係なく、肋骨全体をひとつの障害として取り扱います。

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